前回のお話で、資本性劣後ローンの特徴など、良い面のみをご紹介しましたが、今回はどちらかというと負の側面についてご説明したいと思います。
※表現の正確性より分かりやすさを優先していますので、ご注意ください。
利率について
「劣後」ローンなので、お金を貸す側からすれば、倒産した場合に回収できる可能性が低くなるようなリスクの高いお金を貸すので、融資の利息は通常の利息より高く設定されます。
(この辺りは、ギャンブル中毒に陥ってる人など、とても返済できそうにない人に10日で5割などというとんでもない利息で貸し付ける「闇金ウシジ〇くん」等でも感覚的にご理解いただけるかと思います。)
また、「資本性」ローンなので出資と同様の性格を持っているため、出資に係る配当のように利益が増えれば増えるほど支払額も増えるという性質を持っています。
金利は、当初3年間が一律0.5%となっており、4年目以降が赤字の場合は、引続き0.5%、黒字の場合は、貸付期間に応じて2.6%または2.95%となるようです。
それならば、資本性劣後ローンでお金を借りてずっと赤字にしておけば、返済期間も長く低利息で、しかも金融機関からも高い評価を得られて全てが上手くいくのでは?と思われる方も多いと思いますが、そうは甘くないのが世の中で、資料中にさらっと書かれている「ご利用いただける方」が非常に大きなハードルになる可能性が高いです。
ご利用いただける方
資本性劣後ローンの貸し手からすれば、借手に大きな利益を上げてもらって高い利息を受け取れ、しかも返済期限まで倒産せずに元本と利息を手にしたいというのが当然考えるべきところだと思います。
そこで、次の3つのようなハードルを課して貸出先を限定しています。
①J-Startupプログラムに選定された企業又は中小企業基盤整備機構が出資する投資ファンドから出資を受けた方
②中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業の再生を図る方
③原則として認定経営革新等支援機関(認定支援機関)(注4)の指導を受けて事業計画を策定した方であって、かつ民間金融機関等との協調支援(民間金融機関等が日本公庫の融資に合わせて、または融資後一定の期間内に、新たな融資を行うこと)により事業の発展又は継続を図る方
ご利用いただける方の詳細
①については、基本的には企業のオーナーのみならず外部のファンドなどからも出資を受けている会社ということで、企業の透明性(オーナーと会社との取引の透明性が確保されており、かつ「成長」についても年率20%以上の成長を見込まれる企業が対象となり非常にハードルが高いです。
②については、コロナにより資金繰りが苦しくなった企業が専門家のサポートを受けて「特例リスケ計画」を策定し、それに則って経営している状態ということで、再生計画に基づき経営が行われている会社ですので、将来利益を上げる計画が作られ、それに向かって経営している会社が対象になります。
③については、認定支援機関の支援のもと事業計画を策定し、それを民間の金融機関が見て融資を行う見込みが高いという会社が対象(注)となるため、こちらも将来利益を上げる可能性は高い会社に限定されます。
(注)資金調達と利益の関係についてはいつかブログで説明したいと思います。
このように、①~③いずれの会社にしても会社の外部に対してコミット(約束)した計画に沿って経営が行われており、将来利益を出す可能性が高い会社ということができます。
まとめ
資本性劣後ローンについては、金融機関からの評価、返済期間について大きなメリットがある一方で、どんな会社でも対象になる訳ではなくそれなりにハードルが高い。
また、将来利益を上げた場合には高い利息を支払うことになる。
そのため、対象となる会社であっても自社の資金繰りの状況をきっちりと考えた上で調達すべきか否かを決定すべきだと思います。
個人的には、(後日詳しく解説しますが)株を発行するよりはコストが安く比較的長期で調達できる資金という位置づけとして考えておけば良いかと思います。