資本性劣後ローンについて①

今回は、経済産業省より6月12日に公表された「令和2年度第二次補正予算等(経済産業省関連)の概要」から、1兆円2千億円の予算が計上されている「中小企業向け資本性資金供給・資本増強支援事業」(長い!)について、ベンチャーキャピタルとの資金調達交渉経験がある私自らの経験も交えて説明していきたいと思います。
※専門的な内容についてはなるべく噛み砕いて解説するようにしておりますが、字数などの関係で十分平易な表現になっていない箇所も多いかと思います。ご質問等ございましたらお気軽に問い合わせページよりご質問ください。

目的・概要

経済産業省の発表資料によると、
・新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中⼩企業に対して、出資等を通じた資本増強策を強化することで、スタートアップの事業成⻑下⽀えや事業の「再⽣」により廃業を防ぐとともに、V字回復に向けた「基盤強化」を図ります。
・具体的には、⼀時的に財務状況が悪化した中⼩企業等に対して、⽇本政策⾦融公庫及び商⼯組合中央⾦庫等が、⺠間⾦融機関が資本とみなすことができる⻑期間元本返済のない資本性劣後ローンを供給します。
・また、中⼩機構が出資する官⺠連携の中⼩企業経営⼒強化⽀援ファンド、中⼩企業再⽣ファンドを全地域で組成し、ファンドを通じた出資や債権買取等を⾏い、経営改善まで幅広い⽀援を実施します。
経済産産業省令和2年度第2次補正予算の事業概要(PR資料)より引用

要は、期間中一定額の約定返済を伴う通常の融資ではなく、後述の「資本性劣後ローン」により中小企業の資金繰りを支えようというものです。

融資との違い

中小企業の資金調達手段としては、銀行融資と(主にオーナーからの)出資があり、このうち銀行融資によるものが大部分を占めていますが、「資本性劣後ローン」による融資は、「負債」に分類される通常の銀行融資と異なり、「資本」に分類されます。
貸し手の金融機関から見ると、融資で資金調達した場合は、「負債比率が上昇し財務状況が悪化した」と見られるのに対し、資本性劣後ローンによる融資を受けた場合は、「資本が増強され財務状況が改善された」と評価されます。(難しい理屈はさておき、この部分だけ覚えておいていただければ結構かと思います。)

バランスシートの構図

バランスシートの構図

「劣後」の意味

もし会社が倒産した場合には、残った会社の資産を債権者(従業員、税務署、取引先、金融帰化など)に分配することになります。分配する順位は、債券の種類によって決まります。(一般的には、従業員の給与や税金が他の債権より優先されることになります。)
この「劣後」とされるものは、分配の優先順位が低くなります。
ざっくりいうと、優先債権→一般債権→劣後債権の順で分配されていくことになります。
つまり、会社が倒産した場合でも回収される可能性が低いため、出資と同じ性格を持つ資本とみなされることになります。

返済期間

期間中一定額の返済が伴う通常の融資と異なり、資本性劣後ローンは、返済期限が到来した時に一括で返済することとなります。
返済期間は、「5年1ヵ月、10年、20年」と、通常の融資と比べて非常に長い期間が設定されることになります。

ここまでの話だと良いことづくめのように思える資本性劣後ローンですが、デメリットやローンを受けるためのそれなりに高いハードルもありますので、次回はこの辺りについてご説明していきたいと思います。

 

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