大阪市都島区のBiz Bloom(ビズブルーム)経営会計事務所の税理士室田です。
前回のお話はこちら。
「中小企業白書」の内容をご紹介しながら決算書を活用した財務分析についてご説明させていただいております。
財務分析の方法と意味合い(損益分岐点比率)
損益分岐点比率は、実際の売上高に対し、損益分岐点比率がどの程度になっているかを示すもので、あと何%売上が下がれば赤字になるかを示す指標で、低ければ低いほど赤字になりにくく良いとされています。
そして、前回ご説明したとおり、損益分岐点比率については売上高経常利益率や自己資本比率と違って決算書だけでは算出することができない指標になっています。
具体的な計算式は、損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100
という事ですが、決算書のどこにも「損益分岐点売上高」という項目はないですよね・・・。
これは別途計算する必要があります。
(ちなみに、webで損益分岐点売上高を上手く説明しているサイトがないか調べてみましたが、そもそも損益分岐点売上高について説明しているサイトがほとんどない状態でした。)
損益分岐点の考え方
損益分岐点とは、利益と損失の分かれ目ということで、利益がちょうど0になる点(売上高)のことを指します。
という事は、売上の金額が変化した場合に利益がどれほど変化するかを把握する必要があります。
ここで出てくるのが以前の「Uber Eatsを財務で考えてみた」でご紹介した変動費固定費という考え方です。
変動費は、原材料やセールスマンのインセンティブのように売上が増えるとそれに伴い増加する費用のことを言い、
固定費は、地代や従業員の基本給のように売上が増減しようと一定額発生する費用のことを言います。
売上からこの変動費を引くと売上が増えることにより、どの程度利益が増えるかが分かります。
(というのも、固定費は売上が増減しようが一定額発生しますので)
ということで、費用(変動費+固定費)と売上が等しくなる点、これを損益分岐点と言います。
下の図ですと、赤の星印で示した部分です。
損益分岐点の考え方の応用
損益分岐点の考え方は決算書には載っていないとお伝えしましたが、という事はマイナーな考え方であまり使われていないのでしょうか・・・?
むしろ逆で、経営管理において非常に優れた考え方です。
ただ、法律上それを公表する必要がないので各企業の決算書には出てきていないだけです。
実際に日産自動車の「2020年度決算報告」において「2018年度の損益分岐点は約500万台でしたが、現在は約440万台で利益を確保することが可能です。」というコメントがあり、あえて公表していないだけで社内では損益分岐点を把握していることがうかがえる。
実際に私が過去勤務していた会社でも経営陣への業績報告については、この損益分岐点については必ず言及していました。
「決算書なんて役に立たない」と仰る方もいらっしゃいますが、決算書の表面だけでなく少し分解してみると新たな発見も多くあると思います。
特に損益分岐点の考え方などは、経営上トップシークレットに位置することもありますのでなかなかこの考え方自体を耳にすることも少ないかと思います。
その他の役に立つ指標
その他の役に立つ指標としては、「債務償還年数」があり、これは借入金など返済が必要な「要償還債務」を「返済原資」(利益+減価償却費)で割って計算します。
銀行が資金を貸し出しする際には、この「債務償還年数」と「自己資本比率」を見て判断していると言われています。
事業計画の重要性
あと「中小企業白書」の中で興味を引くところといえば、全746ページの176ページから書かれている「業績・資金繰り予測の期間」と、財務面での課題及び財務指標(売上高経常利益率、自己資本比率)の相関関係でした。
下の図のような形で先まで見通している会社の方が財務面での心配が少なかったり、実際の財務指標も優れているということでした。
先々まで見通して先手を打てているということでしょうか。
財務指標を活用した事業の見直しの事例
中小企業白書には、事例も数多く紹介されており、経営者が財務を徹底的に学び、従来は根拠のない高い数字を課しているだけだった営業目標を財務指標を基にしたもの変え、そして企業の体質改善まで行ったという事例も紹介されておりました。
今回ご紹介しました、損益分岐点の考え方や事業計画については少しコツが必要だと思いますので、お困りの方は、当所までお問合せいただければ幸いです。