はじめて「資金繰りに悩む社長」を担当したときに読む本 セルバ出版

コロナ禍で資金繰りに悩まれている会社も多いかと思いますが、
資金繰りをサポートする税理士事務所で認定を取っているところも和多くある中小企業庁が定める
認定経営革新等支援機関」が経営改善するためのノウハウを記載されています。
本書が類書と異なる点としては、資金繰りのノウハウや金融機関との交渉方針ではなく、
「経営改善計画」を通じて、資金繰り、利益、売上を改善するための具体的な手法について
しっかりと記載されているという点です。

経営改善計画について

業績の悪化に端を発する資金繰り悪化を改善するために、中小企業が認定経営革新支援機関のサポートを
受けて策定する計画で、この計画を策定することにより、金融機関からの借入金の返済条件変更(リスケ)や
資金調達などの金融支援を受けることができます。
もちろん、重要なのは策定にとどまらず、計画を実際に実行に移すことです。
そして、この計画の内容は、一般的に次のような項目になっています。
・企業概要(会社情報、株式、役員状況など)
・ビジネスモデル俯瞰図
・グループ相関図・組織図
・経営改善の骨子、事業の方向性
・経営改善の具体的な施策・実施時期
・数値計画(損益計画、財産計画、キャッシュフロー計画など)
・借入金の返済計画
・モニタリング計画(原則3年間)
そして、ありがたいことに、この計画を策定するための専門家報酬の2/3については、補助金で賄うことができます。
また、都道府県によっては、残りの1/3部分についても一定の補助を行っているところもあります。
ただし、この補助を受ける際には事前にメインバンクの事前了解(支店長印を申請書に押すことが必要)が必要になります。

2つの会計

2つの会計といっても、普段会計に接する機会の少ない方からすると、毎期やっている税務申告のための決算が二種類あるのかという
疑問を持たれるかも知れませんが、税務申告のための決算は、「財務会計(私個人的には、資金調達などの財務という言葉と
混同されると思うので「制度会計」という呼び方をしています。)と呼ばれております。
そして、もう一つは、「管理会計」と言われるものです。
簡単に特徴をまとめると、以下のような形です。

制度会計(財務会計)

税務署や銀行といった企業外部の利害関係者に企業の財政状態や経営成績など経済的情報を提供するための会計、
平たく言えば、皆さんが通常目にする「決算書」を作成するための会計

管理会計

企業自身の情報を分析活用する目的で行われる会計
例えば、月次売上金額、部門別損益、商品の損益分岐点など
有名な京セラのアメーバ経営もこの管理会計に該当します。

管理会計の重要性

本書では、後者の管理会計の重要性が繰り返し解かれております。
一例としては、多店舗や他事業を展開している企業にとっての部門別や店舗別の会計データや
他社の決算書分析を通じて得られる自社の原価率などがあげられています。
店舗別の会計データについては、例えば不採算店舗の閉鎖や利益体質の良い部門へのシフト、
自社の原価率については、原価低減の施策を検討するなど、会計数値を通じて具体的なアクションに
結びつくという特徴があります。
そして、意外と知られていない点だと思いますが、税理士事務所の多くはこの管理会計の経験が極めて少ない、
もしくは全く持ち合わせていないという点があります。
実際、会社さんと同業他社の平均利益率などのデータを持っている事務所は少ないと思います。
会社の分析のための会計なので、実際の企業の財務経理部門で勤務経験のある方、あるいは一部の公認会計士でないと
なかなか管理会計に対する経験と知見は持ち合わせていないと思います。
もちろん、私は企業の財務経理部門を経験しているので、管理会計はイヤというほど
(働き方改革など言われる前だったので、それこそ夜中まで管理会計資料の作成をしていた記憶が・・・。
どこの会社でとは言いませんが・・・)

アドバイスをする際の心構え

私が本書で最も心に残っているのが、経営改善計画策定をサポートする専門家としての心構えでした。
それは、『(コスト削減の対策には)必ずしも我々支援者が踏み込む必要はありませんし、中途半端な
知識でアドバイスできるものでもありません。数値や分析結果を活用しながら、うまく質問を投げかけることで
その会社の「現場の知恵とプライド」を引き出して具体的な対策のきっかけを提供することが肝要です。』
というので、専門家といえば、なんでも知っていて教えるというイメージを持ちがちですが、本書でいう
アドバイスをする際の心構えとしては、一方的に教えるというスタンスではなく、共に取り組むという
姿勢が重要ということかなと理解しましまた。
もちろん、会社の業界のことについては、会社の方の方が詳しいということもあります。

この記事をご覧になって、管理会計に取り組んでみたいという方がいらっしゃれば、お気軽にお問い合わせください。

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