会社を第三者に譲る際の留意点①

■ はじめに

中小企業の第三者への承継、 いわゆる M& ではどのような点に注意する必要があるのでしょうか。まず第三者に譲るということはあなたは会社の 「売り手」 になります。
通常の買い物と同じ様に、 買い手が対価を支払う対象を明確にするために、 会社の実態を誠実に開示することが法的にも求められます。
また、 譲渡にかかるリスクや譲渡までに会社と個人の債権債務をきちんと整理しなくていけないことなどを売り手として認識しておくべきルールがあります。

■ 売り手企業にとっては初めての経験

中小企業の M&A における 「売り手」 企業のほとんどは、M&A の経験がない企業です。
売り手企業の中には、 譲渡とは何を売るのかをいまひとつ理解できていない経営者や関係者が存在します。
とりわけ株式譲渡は資産、 負債をそのまま買い手側に引き継ぐことになるということが理解しにくいですね。
譲渡直前に勝手に法人の資産を処分しようとしたり、 経費支払を増やしてしまったりする事例が見受けられます。
売り手側ならば、 売買代金の決済 (クロージングといいます) に向けて財務は誠実に開示をし、 適正に維持しなくてはならないこと、
また個人と法人間で貸付金や借入金がある場合は譲渡時までに精算されることなどを、 M&A の取組みの初期段階から専門家や顧問の会計事務所に説明をしてもらっておくほうが賢明です。
譲渡後、 重大な瑕疵が見つかり、 買い手側が損失を被った場合、 諍いとなるリスクも考慮しておく必要があります。
私が実際に経験した事例でいえば 売り手企業の株主でもある経営者の奥様が、
「会社の預金は全部個人に移して、 残った財産を引き渡すのかと思っていたわ。 聞いていた話と違うわね」 といったというヒヤッとする事例がありました。
経営者には理解してもらっていたつもりでしたが、 奥様にはどうやら間違って伝わっているようでした。
慌てて株式の現金化の流れを丁寧に説明し、 何とか理解していただけましたが、 以後は早い段階から関係当時者にはクロージングまでの流れとスケジュールなどの説明資料を配付して、
「顧問の会計事務所の先生にも確認してもらって助言を受けてください」 というようにしています。
売り手側の心理としては事業を手放す寂しさがあり、 譲渡手続きが進むにつれ、 譲渡条件がはたしてよいものかどうかの判断がしにくく、
譲渡に向けた手続が手際よく進むほど、 不安に感じてしまうのが当然だと思います。

■ M&Aの経験が豊富な専門家へ相談しましょう

そこで、 早い段階から税理士などの専門家が助言役として立つことが望ましいといえます。
売り手は買い手側からの提示条件の評価をしてくれる相談者がいれば心強いはずです。ただ、専門家の看板を掲げていれば誰でも良い訳ではありません。
専門家の中でもM&A自体の経験がある人はそんなに多くないと思いますので、必ず経験豊富な専門家に相談したいところです。
交渉相手の規模によって譲渡価格の算出方法や交渉のツボが異なったりしますし、何より一生に何度もある経験ではないので、
インターネットの情報だけで選ぶのではなく、実際に面談をして、自ら直接関与したことのある案件を尋ねるなどしてM&Aに慣れた専門家を選ぶようにしましょう。

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